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大気拡散シミュレーションシステムかくさんすけっと / 納入事例

環境


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出典:第12回廃棄物学会研究発表会講演論文集 2001
C7-8 「焼却施設集積地域におけるダイオキシン類汚染関東学院大学 川本克也、 関東学院大学大学院 鈴木和将

 

研究目的

 
 地域の環境中、とくに大気中のダイオキシン類汚染は、廃棄物焼却施設に起因するのが一般的である。ただし、比較的狭い範囲に多くの焼却施設が立地する場合には、それらの影響について正確に把握することが濃度低減対策をとる上で重要と思われる。発生源としての可能性のある複数の施設が集積する地域をもつ広島県府中市では、1999年1月および4月の大気中ダイオキシン類測定において、当時の暫定指針値0.8pg-TEQ/m3を大きく超える値が連続して検出された。これを契機に、大気中ダイオキシン類濃度を中心として、発生源と環境中濃度との関係を明らかにすることを目的として調査・研究を行った。
 

調査方法

 

調査地域

 
図1 調査対象地域 調査対象地域は、図1に示す府中市本山地区である。この地域には地場産業である木工家具の本山工業団地があり、工場内から排出される廃棄物を焼却する個別事業所の焼却施設および産業廃棄物焼却事業者の焼却炉、さらに市の一般廃棄物焼却施設である府中市クリーンセンター(間欠運転炉)がおおむね1200m四方の範囲に近接して立地しており、これら複数の施設からの排ガスが日常的に排出されている。大気の定期測定地点は、図中に記入したA地点(月見ヶ丘体育館)ほか入れ替わりはあるがB〜Fの計6地点である。
 

調査時期および方法

 
 1999年1月から四季ごとに(3か月に1回ずつ)継続して、前記のうち4地点で環境大気の定期測定を行っているほか、一部それ以外の地点での測定を追加した場合もある。市クリーンセンター(1)と本山工業団地(2)という大別して2つの発生源が、各々大気中濃度にどれだけ寄与しているかを評価するために、2000年1月1〜3日および4月25〜26日に、(1)および(2)の操業がすべて休止と考えられる条件(4月25〜26日)の3条件における環境大気の測定を行った。なお、(1)が稼動している条件では、その煙突排ガスに関するダイオキシン類測定も行った。
 一方、市販の大気拡散計算用ソフトウェア(日立エンジニアリング製「かくさんすけっとver1.0」)を用いて、各発生源のデータを入力して大気中濃度を予測・計算し、寄与度についての評価を行った。
 

測定方法

 
 各地点で同時に24時間のサンプリングにより、ダイオキシン類を測定した。大気試料の吸引流速は700l/minで行い、総量約1000m3を採取した。ガス状、粒子状に分けてサンプリングを行った。また、A点においては、不定期に1週間の長期連続サンプリングを行って評価の参考とした。A点で風向・風速も同時に調査した。
 

結果と考察

 

大気中濃度の推移

 
表1 大気中ダイオキシン類の定期測定結果) 表1に、1999年1月からの大気中濃度測定値を示す。工業団地にもっとも近いA地点で、当時の指針値としての0.8pg-TEQ/m3を2倍以上超える値が2回連続して測定されたために、集中的な調査が始められた。A地点の値とその推移をみると、他の測定地点より常に濃度が高く、またいったん低減し始めてから2000年10月には再び環境基準を超えた。しかし、年間の平均値および濃度は低減していると思われる。なお、A地点で測定された有風時の風向は、地形上の特徴から比較的南側からが主風向となる。ただし、風速0.4m/s未満の無風時間帯も調査期間のうち25〜50%程度みられた。
 2000年4月に行った定期測定の24時間を含む1週間におよぶ長時間サンプリングの結果は、0.23pg-TEQ/m3であった。
 A地点での大気中PCDD・PCDFの同族体分布を、1999年1月および2001年4月を例にそれぞれ図2(a),(b)に示す。2pg-TEQ/m3となった(a)ではPCDDが比較的高濃度であるが、濃度が約1/10に低減した(b)ではPCDFの比率が増していた。
図2 PCDD/Fsの同族体分布
 

各発生源の寄与

 
図3 ダイオキシン類発生源の条件と大気中ダイオキシン類濃度 図3に、市のクリーンセンターと本山工業団地の稼動条件を設定した場合のA,BおよびC地点での大気中濃度測定結果を示す。この結果から読み取れることは、まず、いずれの焼却施設も休止している期間中において濃度は非常に低いことである。A地点で0.014pg-TEQ/m3、B地点で0.016pg-TEQ/m3およびC地点で0.022pg-TEQ/m3となった。これは、この地域のバックグラウンド値になるものと思われる。
 クリーンセンターが稼動することによっていずれの地点も濃度が上昇している。この条件での濃度はA地点よりB,C地点の方が高く、A地点で0.047pg-TEQ/m3(休止時比3.4倍)、B地点で0.090pg-TEQ/m3(同5.6倍)、C地点で0.068pg-TEQ/m3(同3.1倍)となった。さらに、工業団地のみが稼動している間の値は、前記と傾向が異なりA地点で休止時の18倍の0.25pg-TEQ/m3、B地点で11倍の0.17pg-TEQ/m3、C地点で3.9倍の0.085pg-TEQ/m3となった。このように、とくに工業団地稼動時には、北側に隣接するA地点の濃度上昇が非常に大きい。すなわち、A地点は工業団地から排出される排ガスの影響を強く受けると推測された。これらの結果をもとに両施設群が稼動する通常時の濃度を見積もると、A,BおよびC各々について0.28, 0.24および0.13pg-TEQ/m3となった。
図4 工業団地のみ稼動時のPCDDs/PCDFs実測濃度にもとづく粒子状およびガス状濃度 なお、府中市を含む広島県東部地域では一般廃棄物処理をRDF製造で代替することが決定されていることから、クリーンセンター起因の負荷がいま以上に低減すると予想される。
 一方、粒子成分として測定される濃度およびガス状として測定される濃度の内訳を示すと、工業団地稼動時には各地点で図4のようになった。他の2条件の場合にはC地点の全休止時を除き、ガス状の濃度の方が高く、ここに示す結果とは対照的であった。すなわち、工業団地からの排ガス中には粒子成分中PCDDs/PCDFsの方が比率が大きいと考えられる。この実験を行ったとき同時にクリーンセンターの排ガス測定を行ったが、排ガス中ダイオキシン類の{ガス状/粒子中}比は1.3で、ガス状成分の方が高濃度であった。全施設休止時のA,B地点大気ではこの比が4前後となっており、工業団地の寄与度が高まると粒子中存在成分が比較的高濃度になると考えられた。
 

拡散モデルにもとづく濃度予測

 
図5 工業団地のみを発生源とした場合の春季における大気中ダイオキシン類濃度予測計算結果 拡散モデルを用いたダイオキシン類濃度予測と発生源との関連性を検討した例が最近みられるようになった1)。ここでは、クリーンセンターおよび工業団地内の主要な発生源に関する排出データを用いて、実測調査の測定条件と同様に予測を行い(適用モデルはプルーム・パフモデル)季節ごとに平均濃度を求めた。クリーンセンターのみが稼動している条件では、最大濃度の出現地点はクリーンセンターの北北西の方向約2kmと東約1kmの地点の2か所で、濃度は0.05pg-TEQ/m3程度と予測された。季節ごとの変化はあまりなかった。煙突が高いので拡散の効果がかなり出ていると考えられた。このことからも、クリーンセンターが当該地域のダイオキシン類濃度に与える影響度は相対的に小さいことが示唆された。
 次に、本山工業団地のみを発生源とした場合の予測について、図5に春季における例を示す。これより、排出源の集まる工業団地東側近傍に比較的高濃度の地点が出現すると予測された。A地点で0.1〜0.3pg-TEQ/m3の濃度範囲(クリーンセンターの寄与も含まれるが2001年4月の実測値は0.19pg-TEQ/m3)になると予測され、工業団地東側の最大濃度地点では0.91pg-TEQ/m3と予測された。各発生源の排出濃度の測定値が限られており、変動も大きいと思われ精度の点で考慮すべき点もあるが、3.で示した実測結果と照らし合わせると、当該地域の大気中ダイオキシン類には工業団地の寄与が比較的大きいことは結論として指摘できると思われた。
 

謝辞
  本調査研究にご便宜いただいた府中市当局に感謝します。

参考文献
  1) M. Suzuki et al.: ORGANOHALOGEN COMPOUNDS, Vol.45, 316-319(2000)

* 本ページはWeb上で読みやすくしているため、実際の掲載論文とは段組が異なります。
 
 
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